芸術系の大学を卒業後、京都が好き、もてなしをすることが楽しいという思いが強いことから、学んできたジャンルとは異なる旅館の仕事に就いた溝上さん。社会人として初めての経験も積みながら業務内容はもちろん、人生に欠かせない多くのことを学んでいるそうです。
福岡から大学進学のために京都へ移住して、卒業後は勉強してきたアートプロデュースの知識と技術を活かしたいと、九州の芸術祭を3か月間手伝いましたが、京都が恋しくて。そもそも、この街に暮らす人々や落ち着いた古都の街なみ、歴史も含めて大好きで、九州から京都へ戻りました。
学生時代は、遠方から京都へ遊びに来る友人たちを家に泊めて観光地を巡ったりすることも好きだったので、観光客の皆さんのお世話をする旅館の仕事は向いているかもしれないと、今の職場に就職させていただきました。でも、最初は社会人としての経験がほとんどない状態だったので、基本的なコミュニケーションを一から教わり、当初は本当に未熟だったことを思い出します。
とにかく京都が好きなので、お寺や神社を巡ったりします。たとえば、
※両足院:建仁寺の塔頭
※圓徳院:高台寺の塔頭
フロント業務が中心ですが、まず朝出勤をして事務作業を行いながら、お客様がお出かけの際には観光案内をしたり、チェックイン前に荷物をお預かりしたり。チェックインが始まったらお部屋へのご案内、夕食配膳のお手伝いや宴会が入ると給仕なども行います。その都度、他のスタッフが気持ちよく働けるように臨機応変に動くようにしていますし、誰に見られているかわからないという意識を持って笑顔でいられるように心がけています。一番大切なのは、相手に寄り添うこと。女将や先輩の皆さんはお客様が困られた瞬間に手を差し伸べているんです! 私は皆さんに何度も助けられてきました。今は恩返しできるように日々精進しています。
小さなことは無数にあります。思い出深いのは、お客様のチェックアウト時に玄関先で写真を撮影された時のこと。海外の方でしたが「あなたも一緒に入って」とご一緒して、名前も聞かれて「また来るね」と、言っていただけたことは、今もこの仕事をする支えになっています。こちらに勤める前までは、自分のことばかり考えていたように思います。女将をはじめ先輩方は、周りが心地よく過ごすにはどうしたら良いのか、この人のためにはどうすればいいのかと考える方ばかり。今まで人を思いやることに、気づかず過ごしてきたことに反省しますし、私はどれだけの人に支えられているのかを気づかされ、人生勉強させていただいているなと思います。