全室スイートのデザイナーズホテルで働いて9年。「人としての魅力が磨かれる職場です」と話す榊原さんは、東京から京都へ移住し、全く違う業種からの挑戦でした。訪れる人それぞれに合わせたマニュアルのない接客を求められますが、難しさより面白さが勝る仕事だと言います。
深い理由はないのですが、きっかけは大好きだった祖父の墓が京都にあり、年に5回ほど一人で訪れていたことです。京都の良さと観光都市であることを再認識しました。そして30歳を超えた時に生まれ育った関西に帰りたいと思っていたところ、ネットでこのホテルがオープンすることを知り応募しました。そもそも人と接することが好きだったこともあります。
前職は不動産業で不安もありましたが、経験者ではなく異業種だったことがこのホテルの選考基準に合い採用につながったようです。最初は、ありきたりのホテルのサービスではなく、人に寄り添う大切さを求められ難しいこともありましたが、失敗しても怒られることはなく、次につながる思考を求められたことが、今の自信につながっています。
毎朝、出勤すると各部屋の状況を確認します。今日は、どの部屋に何時のチェックインで、初めてのお客様なのか、リピーターのお客様なのか。夕食は京懐石料理の仕出しなのかなど、お客様のリクエストを含めて、全8室の状況を頭に入れて、実際にチェックイン業務に入ります。そして、お部屋案内をさせていただきながら、お客様の口には出されない要望を感じ取ることが大切ですから、いろいろなお話をさせていただきます。
後は、部下の指導でしょうか。僕は、失敗をして良いと言っています。正直、お客様の前に出ることを恐怖に思えば、仕事ができなくなるので、それよりも自信をなくしてしまわないように気をつけながらコミュニケーションをはかります。
休日は、家族と過ごす時間がほとんどですね。共働きですが妻に負担をかけていると思うので、私が休みの時ぐらいは、子どもを保育園に預けに行き、帰ったら唯一の自分の時間になりますが、ほとんど寝ています。そして、子どもを迎えに行ったら一緒に夕飯づくりをするのが習慣です。あとは、年に一度必ず妻の行きたい場所へ旅行に行きます。沖縄だったりシンガポールだったり、場所はいろいろです。リラックスする時間は、実は仕事前です。私は、真面目になるとどうも顔が怖いらしくて(笑)。だから自分自身がリラックスして、心は真面目に、表情やカラダは柔らかい感覚を保っておくことを心がけています。
最初は、ナイト時間の勤務に慣れなくて困ったことはありましたが、辛いと思うことはありません。むしろ充実感があります。先日、リピーターのお客様から「このホテルに来るのではなくて、君に会いに来るんだよ」といわれたことは宝物だと思っていますし、この仕事をしていて「ありがとう」という言葉の大切さを知りました。
私たちは、お客様へのサービスとして当たり前のことをしているのに、感謝をしていただけるというのは、本当にこの仕事だからこそです。考えてみると、前職とは違って行きたくないと思う日が一度もないですから、初めての業種ではありましたが、飛び込んで良かったと思っています。